No1.おおはし縫製 大橋孝さん

皆さんは半田の街で半世紀に渡って縫製業を営んでいる企業があることをご存じでしょうか?

そもそも縫製業というのは、ミシンを用いて、衣服や日常生活で必要な布製品を作るお仕事で、一般的な裁縫とは違い、専門的な知識や技術を必要とします。具体的には型紙製作、裁断、接着、溶着、検品、梱包などの業務があります。

その縫製を手掛ける伝統ある会社が、我らが半田商工会議所青年部令和4年度会長の大橋孝さんが代表を務める「おおはし縫製」さんです。

記念すべき令和4年度第1回事業所インタビューは、そんなおおはし縫製さんと代表の大橋孝さんにスポットを当てて、特集いたします。

今のお仕事を始めるきっかけを教えてください。

元々は建築会社に勤めていました。土木関係の業務が中心でしたので、関連する知識や経験を積むことができました。自信にもなりましたし、その後の経営者としての基礎をここで学んだと思います。そんな充実した日々を送っていた矢先のことでした。

突如父が他界してしまったのです。これまで父からは事業継承の話は全くありませんでしたし、建築会社での仕事にやりがいを感じていた自分が「おおはし縫製」に入るなんて考えてもいませんでした。

ところが、何十年も父と一緒に切り盛りしてきた母から「なんとかこの縫製の仕事を残していきたい、私一人では難しい、会社に入ってくれないか」と懇願されたのです。

母からこのようなことを言われることも全く想像していませんでしたし、正直うろたえる部分もありました。しかし、縫製の仕事を大事に育ててきた両親の思いとそれを支えてくださっている従業員の皆さんの気持ちを考えると、「自分がなんとかしなければならない」という気持ちに変わっていったのです。

そして、跡を継ぐ決意を固めました。今から13年前のことです。

縫製業界の現状について教えてください。

この業界は昔ながらの封建的な商慣習が色濃く残っています。元受け会社の傘下には、多くの流通業者・製造会社とその下請け会社・孫請け会社等々、無数の業者が入り乱れており、混沌としています。私の会社は5次6次くらいの下請けにあたり、「業界の底辺」という印象は常に持っています。

下請け会社には受注量や単価を含め、あまり決定権がないのが実情です。低価格で大量にかつ迅速に製品を供給することが求められます。こうした過酷な環境の中で、80年代以降、大手の同業他社は安価な労働力を求め、次々と東南アジアを中心とする地域へ生産拠点を移していきました。海外に移転できなかった中小零細企業の多くは、薄利の中でやりくりし、業界を支えています。

縫製業界は厳しい業界だという印象を受けますが、新たな販路や仕組みづくりの具体例があれば教えてください。

メイン業務は婦人服の縫製ですが、利幅が薄く、主導的に動きづらい弱い立場なので、自由度が高い環境を手に入れるべく、自ら衣料品の小売店へ営業を仕掛け、オリジナル商品の企画立案から製造まで一貫して手掛けるスキームを数年前に構築しました。

同様の方法で、先日は、アウトドアで使用するタープ(日除け)の製造を受注できました。特殊な生地を世界中から探し出し、自社の縫製技術を生かした高品位の製品に仕上げることができたので、「自分達の探し求めていた製品はまさにこういうものだ」と発注元のメーカー様からもお褒めの言葉をいただきました。

実は、発注元のメーカーの社長様は他の商工会議所青年部に所属されており、青年部活動がきっかけで知り合うこととなりました。同じ青年部の仲間として意気投合し、ビジネスに繋がったありがたいご縁です。今後もこうした事例をどんどん増やしていければと考えています。

青年部のメンバーの皆さんも活動をする中でビジネスに繋がるきっかけを見出してほしいですし、それができる団体だと思っています。

おおはし縫製で製造した工業用フィルター①
おおはし縫製で製造した工業用フィルター②

コロナ禍でどのような影響がありましたか?

売上は一時期、最盛期の3割まで落ち込みました。在宅勤務や感染を恐れた巣ごもりの影響で、人々の外出が極端に減ったため、アパレル業界の需要は激しく落ち込みました。コロナの影響が直撃した業界は様々あると思いますが、我々のアパレル業界は著しいものでした。

そうした苦難の環境下で生き残れているのは、長年蓄積した自社の技術力と経験値、新分野への進出があったからだと思います。奇しくも新たなビジネススキーム構築の重要性を痛感したタイミングとなりました。

どのようなことにやりがいを感じますか?

入社して13年程たちますが、当初は目の前の仕事をこなすことに精一杯で、会社の将来展望や新事業のことを考える余裕は全くありませんでした。10年ほど地道に縫製の仕事を続ける中で、ようやく既存のものから脱却して新事業を生み出すことができ、成果をあげつつあります。そうした部分がモチベーションの維持に繋がっています。

ものづくりに携わる方なら共感いただけると思いますが、自分自身が作り出したものが世の中に出て役に立つということは、製造業の冥利に尽きますね。

経営者として手腕を振るわれる大橋さんですが、今年度は半田商工会議所青年部会長という大役も引き受けられます。今のお気持ちをお聞かせ下さい。

恥ずかしながら、私がおおはし縫製に入社したきっかけがそうであったように、会長にチャレンジしようと思ったきっかけも、実は自発的ではありませんでした。青年部活動の中で、多くの方に「大橋やってみないか」「青年部を変えてほしい」という言葉をいただくようになり、周りの人からの熱い思いを聞くうちにじわじわと決意が固まっていきました。

自分自身は、強烈なリーダーシップを発揮し、トップダウンで物事を進めていくタイプではありません。周りの方々からの支援や手助けがあって、自らの持ち味が発揮できると思っています。青年部活動においても同様です。皆さんの力を集結して、半田商工会議所青年部のために、ひいては地域経済の発展のために、1年間汗を流したいと思っています。ぜひお力をお貸しください。

最後になりますが、みなさんへメッセージをお願い致します。

青年部メンバーのみなさんへ

昨年度は新たに 50名以上の方が半田商工会議所青年部のメンバーに加わりました。それだけ地域でのビジネスチャンスや繋がりを求めている方が多いのだろうと感じています。

新年度がスタートし、新旧メンバーもお互いに、まだ名前と顔が一致していない状況だと思いますが、ぜひ青年部活動に積極的に参加していただき、「絆」を深め、お互いが持つ知識や経験を共有し、新たなビジネスへの足掛かりにしていただければと思っています。私自身も青年部活動を通じてビジネスの拡大を体感している一人です。

読者の方々へ

我々半田商工会議所青年部は地域を支える青年経済人として、会員企業の発展はもちろん、コロナ禍で失われた半田の街の賑わいを再創出するべく邁進してまいります。ご支援いただけますと幸甚です。

1年間宜しくお願いいたします。ありがとうございました。

おおはし縫製
〒475-0905 半田市岩滑東町5-82-2
TEL 0569-23-8847

制作/著作  半田商工会議所青年部 広報委員会
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